MASTERS OF BEEF ASSOCIATION

牛肉の新しい地平。

肉牛、牛肉の周辺「アウトルック肉用牛」9

 

飼料が悪いと感染性の病気が増加

―栄養性の病気にしない予防医療が大切―

 

家畜の飼育では、低栄養の時は発育が低下するだけでなく、免疫力の低下により感染性の病気に罹りやすく、また重篤化しやすいことが知られている。肉牛では、栄養水準だけでなく、 濃厚飼料と粗飼料との組み合わせなど飼料の内容が悪い時は、第1胃発酵不全が生じ、これ による多くの栄養性疾患が発生する。

 

したがって肉牛では例えば新飼料資源の開発研究では、飼料の栄養価と経済性の検討だけでなく、その飼料給与が原因の第1胃発酵不全の可能性有無と給与方法についても研究するのが普及上で必須だ。

 

畜産現場での疾病対処は、家畜の病気を治療することから、家畜を病気にしない飼養管理を推進することへと視点が変化している。いわゆる予防獣医療の考え方だ。病気の予防といえば、環境清美とワクチン接種が思い浮かぶが、もう一つ重要なのは栄養条件を改善して病気に罹り難くすることだ。

 

肉牛の第1胃発酵不全が原因で生じる免疫力低下は、子牛の下痢や肺炎の発生を高め、肥育牛では、第1胃の炎症とそれが原因の肝膿瘍の発生や発育の低下、発酵不全により第1胃内で死亡した細菌の細胞膜に由来するエンドトキシン(毒素)による牛のショック死(突然死: 多くは「心不全」として処理される)などを引き起こす。

 

筆者らの試算では、わが国で肉牛の第1胃発酵不全が関与する肉牛の各種疾病が原因の、淘汰・死亡と生産性低下による損失額は年間167億円であり、これは肥育出荷牛1頭当たり 11,200 円に相当する。

 

家畜の疾病を抑え、生産性を高め、健全な経営を行うため、現在は家畜を病気に罹らないための予防獣医療の概念が進んでいる。肉牛の日常管理では、肉牛をとくに栄養性の病気にし ないという予防医療が大切だ。我々、人の予防医療も同様で、予防注射と食事管理・運動管理などの生活習慣管理が柱になっている。

 

(全国農業新聞 2017-12-5 を一部改変 木村 信熙)

 

 

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