MASTERS OF BEEF ASSOCIATION

牛肉の新しい地平。

肉牛、牛肉の周辺「アウトルック肉用牛」8

 

AI、IoT の肉牛生産への適用

―和牛繁殖経営での導入が効果的―

 

近頃 IoT という言葉があちこちでよく出てくるが、肉牛飼育の世界ではあまりなじみがない。少し調べてみると、「読み方は、あいおーてぃーで、従来、インターネットに接続され ていたパソコンやサーバなどの関連機器に加えて、これら以外の物をインターネットに接続する技術のことであり、物のインターネットとも称される」とある。

 

この技術によると、離れた物の状態を知る、環境情報を得る、物の位置や開閉を知る、例えば留守中のペットの行動を知る、などができる。農業の分野でも IoT を人工知能(AI)や 機械と組み合わせ、例えば観葉植物の土壌の水分量を調べ水やりのタイミングを知り、自動的に給水する、などいくつかの成功事例が出始めているという。この技術の肉牛生産への適用については今後の課題だ。

 

肉牛繁殖農家では繁殖成績の向上に向けて、発情兆候の把握と行動監視システムなどが実用化されている。これらの情報と繁殖牛舎、哺育・育成牛舎、肥育牛舎の動態管理システムとが連結した作業体系が動き始めている。大手の企業的な肉牛肥育経営では、生産性改善のために導入を検討している。

 

耕種農業では小規模経営であっても、経営向上のために AI や IoT の導入事例が出始めている。畜産でも小規模の和牛繁殖経営での導入が、何らかの形で進んでいくことを期待したい。 現在農業の新規就農は60歳以上の人が多くを占めており、和牛繁殖農家の平均年齢は70歳を越えている。わが国の和牛繁殖農家の維持には、このような高齢者経営での労働軽減がまず望まれる。それにはAIやIoTの導入が有効だ。地域産業やコミュニティー維持のうえで配慮すべきことだろう。

 

当面は産業界の進捗ウォッチが重要だ。国の革新的技術開発プロジェクトでは産学研連携の体制で、これの肉牛生産への適用につながる基礎研究もスタートしている。

 

(全国農業新聞 2017-11-14 を一部改変 木村 信熙)

 

 

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