肉牛、牛肉の周辺「アウトルック肉用牛」6
海外の安い牛肉と太刀打ち
―収益性高める各種技術の習得と実践が重要―
環太平洋戦略的連携協定(TPP)や日米貿易協定の発効にともない、格安な牛肉の輸入量が増加し始め、わが国の牛肉生産者は危機感を持っている。牛肉生産者も、政府、地域行政も農協も、食肉関連事業者もこぞってその対策に追われている。
海外の牛肉はなぜ安いか。その理由と思われる事項を列記してみる。
(1) 子牛の生産価格が安い(子牛は大地から湧き出でる)
(2) 飼料の価格が安い(広い農地があり穀物が安い、放牧など土地を有効に活用している)
(3) 飼育期間が短い(成長の良い期間に飼育を終了するので飼料効率がよい)
(4) 飼育コスト低減優先の生産体系である(施設費、人件費、飼料代すべてにわたり低価格生産を重視する、加えて経営規模が大きいので 1 頭経費が安くなる)
(5) 霜降りにエネルギーや経費を使わない(牛肉は主食であり、質よりも量、低価格を重視)
(6) ホルモン剤、発育促進剤などを使用する(ことが多い。国ごとに異なる)
(7) 政府が助成している(その程度は国ごとに異なる)
低価格でわが国に牛肉を売り込もうとする国では、このように徹底した生産性の追求がなされている。比較的農地が少なく、土地代が高く、人件費も高く、しかも子牛価格が決定的に高いわが国では、海外の牛肉輸出国よりも低価格な牛肉の生産は絶望的である。付加価値の高い、かつ市場性のある牛肉の生産でなければ肉牛生産経営が成り立たない。その結果、霜降りなどの高品質の追求となりがちで、高価格牛肉の生産に向かうことになる。
販売する牛肉の市場性に合わせた質の追求か、重量の追求か、などの肥育体系の選定と、さらには経営に合った子牛の選定と肥育牛の販売市場の選択も重要になる。それに適合した収益性を高めるための各種技術の習得と実践が重要であり、その覚悟を持った牛肉生産経営が必要ということになる。
(全国農業新聞 2017-9-11 を一部改変 木村 信熙)
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