MASTERS OF BEEF ASSOCIATION

牛肉の新しい地平。

肉牛、牛肉の周辺「アウトルック肉用牛」5

 

肉牛の肥育研究「ウンコロジー」

―食べたものと糞を分析―

 

世の中には、そんなに食べてもいないのに、肥(ふと)ってしまう人と、よく食べるのに体 重と体型は若い時とさほど変わらない人がいる。どうしてそのような違いが出るのか、その理由は栄養理論で考えればある程度わかる。肥る、痩せるという基本原理は、動物栄養学では人の栄養学よりもずっと進んでいる。

 

人が肥らないのは他の人よりも

(1)ウンコの量が多い、

(2)体温が高い、

(3)多くの運動をしてい る、

(4)生理的に対外ストレスに対応できる、

のどれかまたはいくつか、あるいはそれらすべてを持っているからだ。それぞれに生理的な要因やその原因がある。例えば、(1)のウンコの 多少には食べ物の中身や、消化酵素の作用力(遺伝も)が影響し、(4)のストレスには心理も影響する。

 

食べたエネルギーのうち、消化されなかった部分は糞エネルギーとして出てしまう。つまり、 不消化エネルギーの大小が肥満に影響する。次に消化されたエネルギーは、生きていくために使われる。余分なエネルギーは、蓄積される(これが肥満だ)。そして消化されたエネル ギーが成長などに使われると肥らない。また運動などにより、熱として発散されるなら肥らない。

 

筆者は肉牛の栄養学が専門で、例えば牛をいかに肥らせるか、というようなことを産業人としてやっている。そこでは牛に対しては、人の願望とは逆に、蓄積エネルギーが多くなるような工夫をすることになる。そして肥ったおいしい牛肉を生産することになる。

 

畜産学ではこのようにエネルギー理論が家畜別に、品種別に、ステージ別に、時には環境条件別に細やかに確立されている。「動物栄養学」とは、平たく言えば、食べたものがどれだけ利用できるか、どれだけ糞に出てしまうかの学問だ。筆者はこれを「ウンコロジー」と称している。ウンコロジーでは、入るもの、出るものの両方と、肉や乳などの生産物を正確に分析する。文字通り糞まみれの研究だ。筆者のように自由採食しても肥らない場合、肉牛では育種学的に淘汰されてしまう。

 

(全国農業新聞 2017-8-15 を一部改変 木村 信熙)

 

 

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