MASTERS OF BEEF ASSOCIATION

牛肉の新しい地平。

肉牛、牛肉の周辺「アウトルック肉用牛」22

 

平均年齢 70 歳が始めた牧場

―高齢の牛飼いたちが働きやすい工夫を導入―

 

昨年、北海道に新たな哺育牧場が誕生した。この牧場を立ち上げたのは、肉牛牧場で代表取締役を務めていた安藤登美子さんだ。昨年5月に息子さんに社長を引き渡したのを機会に、 30 年前から彼女をを支えてきた高齢のメンバーとともに、哺育子牛の預託飼育をする新たな牧場を立ち上げたものだ。牛と接することは、安藤さんはじめ高齢の従業員にとってすでにライフワークとなっており、牛飼いが天命の人たちだ。新会社では安藤さんが一番若く、全従業員6名の平均年齢は70.2歳だ。

 

新牛舎では高齢者が働きやすいような工夫があちこちになされている。手をかざすだけで 開閉するカーテン式小型シャッター、電動や人力チェーンで開閉する大型シャッター、注入ノズル付きのミルク撹拌機、運搬機「ターレー」など、いずれも高齢者の負担になりやすい 「しゃがんで何かを持ち上げる作業」を回避するための導入だ。また2棟の牛舎を結ぶ通路 に屋根を張り、飼料タンクを設置している。屋外に出ることなく飼料を調達でき作業負担が 軽減されるのに加え、冬期に凍結した屋外での転倒防止にもなる。高齢者にとって負担となる子牛の搬入、搬出、輸送作業はすべて子牛飼育の委託者が行うことにしている。中心的な役割を担っている1人の男性職員のみは週5日、それ以外の5名は社長を含めてすべて週4日の交代勤務だ。

 

この牧場では、濡れ子市場に出せないような虚弱な子牛も引き受けている。近隣の和牛繁殖農家で生まれた黒毛和種子牛は生後0日で導入している。搾乳後継雌子牛の哺育も行っている。品種別に哺育マニュアルを設定しているわけではなく、個々の牛に応じた個別の管理を行っている。弱い子牛はどうしてほしいのか考え、何だったら、どうしたら食べるの?と いった、常に子牛の気持ちに立った哺育を心がけている。

 

「趣味やボランティアではなく経済動物ですけど、それでも命ですから頑張れない子は助けてあげないと。人間だけがチームじゃなくて牛も含めてチームですから」、と安藤さんは言う。

 

 

(全国農業新聞 2019-1-11 を改変 木村 信熙)

 

 

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