MASTERS OF BEEF ASSOCIATION

牛肉の新しい地平。

肉牛、牛肉の周辺「アウトルック肉用牛」18

 

肉牛生産性の向上と若者の参入

―生産環境と作業環境の改善を―

 

 

わが国の肉牛生産は、海外からの格安な畜産物に対応するため、生産性の向上、畜産物の質の向上を追及し続けていく必要がある。人口密度の高いわが国は、畜産物生産者と消費者とは日常的に隣接しており、生産環境の改善は畜産の存亡にかかわるほどの重要な問題だ。また高齢者社会に向かい、今後の牛肉消費動向も把握して、それに向けた牛肉生産をしなくてはならない。生産性、生産物の質、生産環境の向上と維持の実現には、多くの投資と高度な技術が必要だ。

 

海外の先進肉牛生産国では、肉牛肥育は、日本ですでに見られなくなった牛舎のない屋外飼育方式が主流だ。近隣住民などを配慮した環境整備への投資よりも、本来その投資が不必要な土地で畜産を経営することが重要になる。このような低価格な食料の量的確保が優先な国では、生産コストを引き上げる「おいしさ」などの追求は最優先課題にはならない。おいしい牛肉生産の追求は、日本が世界で先行している。

 

わが国で畜産は、3K(きつい、汚い、危険)な産業とみなされてきた。生産環境の改善は、生産性を改善し、同時に近隣生活者との日常的共存を促す。また作業分析による作業環境の改善は従事者の勤労意欲と質を高める。どちらも経営上必須な投資であり、これらの改善で若者の参入も期待できる。

 

わが国の畜産イメージは変わりつつある。「家畜を飼育する」から「家畜との共存」に、「糞尿を処理する」から「堆肥を生産する」に、「仕方なしの後継畜産」から「希望を持った新規参入」に、「銀行が融資を勧誘する事業体」や「先生が就職を勧められる事業体」が実現しつつある。

 

日本の和牛のように独自に育種改良した能力の高い素牛を導入し、肉牛舎や堆肥舎に多額の投資が必要な肉用牛生産は、世界的視野では特異な方式である。都会人を含めた若者たち が次々と参入してくる、誇りのもてる日本の畜産像が見えつつある。

 

(全国農業新聞 2018-9-14 を改変 木村 信熙)

 

 

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