MASTERS OF BEEF ASSOCIATION

牛肉の新しい地平。

肉牛、牛肉の周辺「アウトルック肉用牛」16

 

肉牛への思い入れと給与管理

―「おにぎり」や「マメ」食べさせる―

 

昨日、四国の肉牛農家を訪問してきた。ここは先代が長年行ってきたホルス去勢牛の肥育から、経営の世代交代とともに和牛肥育に切り替えようとしており、筆者は定期的に訪問して相談相手になっている。新しい経営の取り組みで、和牛肥育の独特な技術を取り入れ、全国各地の和牛肥育農家さんについて行けるかが、お互いに心配なところである。

 

初めての和牛肥育に、彼は緊張しながら日々忙しく飼育管理をしている。彼の牛を見る目は優しく緻密だ。朝の粗飼料給与一時間後にもらえる配合飼料を待ちわびる子牛は、導入4カ月間くらいまでは全ての子牛が立ったままで待っている。その中で特にこの子は声を出して立って待っていた。半年を過ぎるとほとんどの牛は寝て待つようになる。これはおいしいエサを必ずくれることがわかるから安心して寝て待つようになるのだろう、という。飼槽に残ったエサは手で集めて山に盛ってやる。そうするとまた寄ってきて、ほとんどを食べつくしてくれるという。

 

これは、東北のある高級ブランドを作り出す人が、残ったエサを手で集めて固め、「おにぎり」にして給与しているのと同じだ。牛飼いの牛への思い入れは共通している。関東のある高齢の名人は、「私は牛にはマメをやっている」という。できる限り牛舎にいて牛を見て、手まめにエサの給与を工夫するので、特別なエサ「手マメ」を与えているのだと。その名人の牧場には海外からの視察も多かった。通訳の方が目を白黒させる様子が目に浮かぶ。

 

四国の彼の肉牛への思い入れは、すでに各地の名人と共通しはじめている。いずれ名人の技術レベルに達することをめざして、当分の間は共に牛を見ながら歩むことになる。数か月後には初出荷だ。彼の牛は、ほとんどがよく寝ているので少し安心だ。ちなみに彼は、本紙の本稿「アウトルック肉用牛」はいつも読んでいるようだ。これを書いている人がうちに来ているのだ、と 80 歳の親父が喜んでいるという。

 

(全国農業新聞 2018-7-13 を一部改変 木村 信熙)

 

 

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