MASTERS OF BEEF ASSOCIATION

牛肉の新しい地平。

肉牛、牛肉の周辺「アウトルック肉用牛」12

 

EU のチーズと日本の牛肉

―対照的な攻めと守りの中で国際的な秩序作りを―

 

日本には地域の農産物などをブランドとして保護する「地理的表示(GI)保護制度」がある。これは EU の制度に倣って制定されたもので、牛肉では「但馬牛」、「神戸ビーフ」、「特 産松阪牛」、「米沢牛」、「前沢牛」、「宮崎牛」、「近江牛」の8品目に加えて「鹿児島黒牛」、「くまもとあか牛」の合計 10 品目が登録されている(令和2年8月)。日本は農産物の海外輸出を、高品質を武器に伸ばそうとしており、お茶、お米、お酒、牛肉などが先行している。

 

日本と EU は 2017 年 EPA(経済連携協定)の大枠合意に達し、その具体的内容について詳細が協議されてきたが、同年 12 月に合意に達した。EU から輸入される畜産物で注目すべきはチーズである。年間2万トン程度輸入しているソフトチーズについて、低関税輸入枠とその拡大、および関税の引き下げを段階的に進めることになった。そのため日本ではチーズ用牛乳の生産に対する助成事業の予算も計上された。

 

合意当時は農林水産品では、日本側は先述の GI 和牛8品目を含む48品目、EU 側は「カマンベール・ド・ノルマンディ」などを含む GI 71品目の保護が決まった。畜産物では日本は牛肉をEU に、EUはチーズを日本に売り込もうという戦略をもつが、互いに相手の特定産物を GI として保護し合うことになる。

 

これにより、産品への表示だけでなく、広告、インターネット、レストランメニュー等のサービス名称についても、誤認させるような名称の使用は禁止される。例えば「神戸ビーフ」、「神戸肉」、「神戸牛」、「KOBE BEEF」などの表示、「オーストラリア産但馬牛」、「ロッ クフォール風ブルーチーズ」、「北海道産ゴルゴンゾーラ」などの表現も登録産地以外は GI を使えない。
このように日本と EU は牛肉とチーズという畜産物で、EPA を通じてそれぞれの立場で攻めと守りの国際的な秩序を作ろうとしていることになる。ともに牛の生産物であるが、両者 はそれぞれ対照的な政策の下で生産、流通、消費がされていくことになる。

 

(全国農業新聞 2018-3-13 を一部改変 木村 信熙)

 

 

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