MASTERS OF BEEF ASSOCIATION

牛肉の新しい地平。

肉牛、牛肉の周辺「アウトルック肉用牛」11

 

「利き肉」のすすめ

―おいしさにこだわる肉牛経営へ―

 

わが国には牛肉の霜降り度について、膨大な研究と報告がある。従来、霜降り度は枝肉価格に最も強く関連してきたからだ。しかし、これからの牛肉の勝負は、霜降り度だけではないだろう。

 

筆者はある地域で、各地から牛肉を持ち寄って食べ比べを続ける集まりに、数年間参加させてもらったことがある。当初は去勢ホルス肉と和牛雌肉の違いが判らなかったが、その経験のおかげで意識して食べ続けていると、その違いやおいしさがわかるようになるものだと感じる。

 

牛肉のおいしさ表現は「柔らかくておいしい」だけではない。もっと多くのおいしさ表現ボ キャブラリーがほしい。これは現在世の中に「ソムリエ」や「唎き酒師」が存在するように、 牛肉についても将来の「利き肉師」への道につながるものだ。筆者は講演会などで「牛肉を意識して食べ、10桁の個体番号を調べよう、そしてどこで生まれてどこで育った牛の肉だ ったのかを認識しよう」と呼び掛けている。いわゆる「利き肉のすすめ」だ。

 

学術の世界では、牛肉独特の風味、おいしさについて研究が深まっている。いずれはおいしさを数値化し、生肉の時に熟成肉の状態が推定できるようになるだろう。そして簡易測定技術が開発され、牛肉のおいしさを「日本酒度」のように「和牛肉度」などで枝肉や部分肉、スライス肉別に表示できる、実用的な手法が開発されるだろう。

 

牛肉生産者がおいしい牛肉で勝負しようとするには、高度な技術や資金以外に、牛肉のおいしさにこだわる経営が必要だ。意識して自分の牛肉を食べる、他人の牛肉を食べる、和牛を食べる、輸入牛肉を食べるなどの食べ比べなど、日常的に牛肉のおいしさにこだわることと、 自分が飼育する牛へのこだわりが必要だ

 

肥育牛肉の甘みや放牧牛肉のあの味はどうして生まれるのか、ドライエージングはどのようにおいしいのか、など牛肉の味に関する学術的な情報をキャッチすることも心がけよう。そのような知識や情報が得られるような、そんな人付き合いも重要だ。おいしい肉牛の生産経営はこうして存続発展できるだろう。

 

(全国農業新聞 2018-2-13 を一部改変 木村 信熙)

 

 

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