肉牛、牛肉の周辺「アウトルック肉用牛」3
GI 制度への牛肉登録
―高品質を保持する技術と仕組みの構築を―
農林水産省はこの3月3日(平成 29 年)付で、地域の農産物などをブランドとして保護す る「地理的表示(GI)保護制度」の対象として、牛肉では三重県松阪市などで生産される 「特産松阪牛」(トクサンマツサカウシ)、山形県米沢市などの「米沢牛」(ヨネザワギュウ)、 岩手県奥州市前沢区の「前沢牛」(マエサワギュウ)の3品目を新たに登録した。牛肉では すでに兵庫県内で生産されている「但馬牛」(タジマギュー)「但馬ビーフ」(タジマビーフ)、 と「神戸ビーフ」(コウベビーフ)「神戸肉」(コウベニク)「神戸牛」(コウベギュウ)「KOBE BEEF」の 2 品目がすでに登録されているため、これで 5 品目が登録されたことになる。 (その後「宮崎牛」、「近江牛」、「鹿児島黒牛」、「くまもとあか牛」、「比婆牛」が登録され、 令和 2 年 8 月時点では合計 10 品目となっている。)これらはすべて和牛だ。
この制度は農産物に関する海外での知的財産保護の必要性から策定されたものだ。日本で 登録された種苗が海外で無断で栽培される、日本の地名や商品名が中国で商品として登録 される、日本の食品が各地で模倣される、などの実態があったためだ。
筆者は牛肉の輸出に関する事案で欧州連合(EU)を3回訪問し、WAGYU、KOBE BEEF が一般名詞のようにあちこちで使われる様子を見てきた。そのとき「日本にも GI 制度が法 的に発足し、現在いくらかが申請され、審査に入っている段階です」という情報を伝えたと ころ、ある有力人物が「神戸ビーフが日本の GI 制度で認められれば、EU でいずれ KOBE BEEF という名称は日本の神戸ビーフ以外は使えなくなるでしょう」と発言している。
英国の GI である「スコッチビーフ」の例では、生産者から飼料業者、家畜運搬業者、と畜・ 解体業者などが認証制度の中で一体となって高収益型の体制を実現し、地域経済を大きく 支えている。これで5万人が直接・間接に雇用されていると推定されており、日本で国を挙げて推進している畜産クラスター事業の海外先進事例とも言えるだろう。
日本で地理的表示畜産物の生産と流通が、今後とも維持され発展していくために重要なのは、高い評価を裏切らない高品質を保持する技術と仕組みの構築と維持だ。
(全国農業新聞 2017-6-13 を一部改変 木村 信熙)
Masters of Beef Association(MOBA)
マスターズ・オブ・ビーフ・アソシエーション