MASTERS OF BEEF ASSOCIATION

牛肉の新しい地平。

肉牛、牛肉の周辺「アウトルック肉用牛」1

 

わが国牛肉生産の強み

―高度な食の消費者、高い畜産技術―

 

トランプ氏がアメリカ大統領に就任し、TPP の発効は遠のいたが、国際情勢の中で日本の肉牛産業が大変厳しくなっていくのは間違いなく、今後の経営の見直しが必要となる。このような時にわが国の畜産の強みを認識し、経営の体質強化を目指すのも畜産危機への一つの対応策である。肉牛経営でその可能性のある強みを考えると、次のような3点があげられる。

 

1.消費者の人口密度が高い
狭い国内に多くの消費者が存在する。工業生産と違って肉牛生産は海外に逃げ出さない。従って肉牛生産者と消費者が併存することになり、相互の交流ができる、牛を知り合う、牛肉の鮮度が高い、流通コストが安い、必然的に環境保全技術が進歩する、などが強みとなる。

 

2.日本人は高度な食の消費者である
日本の消費者は食の安全・安心に関心が高く、よく見つめ、考え、発言する厳しい消費者であり、鋭い味覚を持ち、畜産物の品質に敏感で、良いものは高く評価できる。そのため高品質、高価格な牛肉を受け入れることができる。

 

3.日本独自の高い畜産技術を持つ
日本は勤勉誠実な国民性で、ち密な技術の蓄積をしている。例えば牛の綿密な個体管理と環境管理、受精卵移植などのバイオテクノロジー技術を取り込んだ繁殖技術、プロテオミクス、 バイオインフォマティクス、エピジェネティックなどに基づく高度医療技術や育種改良技術の取り込み、栄養理論に基づいた地域資源の飼料への利活用などがあげられる。特に牛肉のおいしさを最近の深い生命科学研究成果を取り込んで、多方面の技術を関連付けて蓄積し、それを生産に反映しているのは海外でも稀である。

 

これら3つの強みに加えて、伝統的な特徴ある高品質の農畜産物に対するわが国の地理的表示保護制度が浸透してきた。現在牛肉では5品目(令和2年夏では10 品目)が登録されている。この制度は国内市場の確保とともに、海外市場への進出と拡大に強い支えとなる。 わが国の肉牛産業を発展させるためには、わが国の独自性を強みとして深化させ、さらに普遍化させて大いに伸ばす、という手法が重要である。

 

(全国農業新聞 2017-4-18 を一部改変 木村 信熙)

 

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