MASTERS OF BEEF ASSOCIATION

牛肉の新しい地平。

肉牛、牛肉の周辺「アウトルック肉用牛」13

 

「飼養衛生管理基準」の順守

―衛生管理の改善は経営の改善になる―

 

食の安全について消費者の関心が高いが、肉牛飼育においてもそれに対応した飼養衛生管理が重要だ。わが国には、平成 23 年に設定された「飼養衛生管理基準」がある。これは家畜伝染病予防法に基づくもので、家畜の所有者がその飼養に係る衛生管理に関し最低限守 るべき基準であり、その順守を義務づけられている。

 

家畜の所有者は、毎年、飼養している家畜の頭羽数と家畜の飼養に係る衛生状況に関して、都道府県に報告することが義務づけられ、その結果に基づき、都道府県は家畜の衛生飼養を指導することになっている。

 

この飼養衛生管理基準の遵守状況が公表されている。平成 29 年 11 月の報告によると、肉 用牛で指導が不要であった(基準が順守されていた)農場の比率は、大規模経営(子牛で 3000 頭以上、成牛で 200 頭以上)では 79%であったのに対し、小規模経営では 52%であった。大小規模別の肉牛、乳牛、豚のそれぞれの経営における遵守率の中では、この小規模肉牛経営が最低値を示している。そして指導を受けても改善していない農場の比率が最も高い。換言すると日本の畜産の中では、小規模肉牛経営が最も衛生管理状況が良くないことを示唆している。

 

日本の肉牛生産の担い手は小規模経営が大多数であり、後継者がいないため経営の将来見通しが立てにくく、衛生管理が行き届かない、という実情もこれには関係しているだろう。この事情が飼養環境だけではなく、労働環境の低下、いわゆる 3K 化(「きつい (Kitsui) 」 「汚い (Kitanai) 」「危険 (Kiken) 」)につながり、そのため後継者が育たないという悪循 環に陥る危険性もある。

 

飼養衛生管理基準の順守率と改善率を高めていくことが、日本の肉牛生産の課題の一つで ある。衛生管理の改善には多くの労力や支出が必要で、直接の収入増につながらないように 見えるかもしれないが、実際は生産性と収益性に確実に影響する。衛生管理の改善は、経営者自身を含めた従事者の衛生意識や、経営意識を高め、結果として経営の改善につながる。

 

(全国農業新聞 2018-4-16 を一部改変 木村 信熙)

 

 

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